Profile

田中 篁心 Koushin Tanaka

略歴


1998年 神奈川県生まれ

9歳より書道教室に通い始める。

2017年から2020年まで徳島県の四国大学書道文化学科に在籍し、

2021年から2023年は同大学大学院に進学。修士号取得。

大学院修了後、地元横浜へ戻り、書道家としての活動を開始する。

書道教室等で指導にあたる傍ら、国内外での作品発表,販売を行っている。

賞歴等


2013年 高野山競書大会 弘法大師賞受賞

2016年  〃  弘法大師賞受賞

2019年 全国高校生大学書道展漢字部門大賞受賞

2020年 徳島県にて藍墨を使った書道パフォーマンスを行う
徳島県議会の議長ならびに副議長の名刺を揮毫

2021年 毎日書道展 U23かな部門 新鋭賞受賞

2023年  〃  公募かな部門毎日賞受賞

2023年 徳島県議会の議長ならびに副議長の名刺を揮毫
町田市の町田せりがやビレッジにて書道講座を行う

2024年1月 青葉台で書道教室開講

2024年4月 神奈川県内私立高校 書道講師


—私が書道をはじめたきっかけ—

幼児時代から絵や字を書くことが好きでした。それでも習いに行こうと思うほどではなかったのですが、小学校に入ってから、学校で取り組む区や市の硬筆コンクールに選抜していただくようになり、そこでそれまで以上に強く字を書くことが好きだと自覚するようになりました。
そんなタイミングで、近所の友達が家からほど近い書道教室に通っているという話になり、通ってみたいと言ったのが書道をはじめたきっかけです。

—気付けば日常に欠かせないものに—

門を叩いたお教室で、一生の恩師である先生に出逢いました。いつもお優しく、沢山褒めて生徒たちの字や頑張りを認めてくださる先生で、もともと字を書くことが好きだった私が書道(この時期は習字ですね)も大好きになるまでに時間は掛かりませんでした。
とにかく毎回のお稽古が楽しみでした。いつも何時間とお教室に入り浸り、好きなだけ書かせていただきました。
友達が家に遊びに来た日など、書道道具を出して書道を遊びにするようになり、学校では授業ノートの隅に字の練習をしたり、
気付けば書道が生活の一部で、欠かせないものになっていました。

—驚きの受賞—

中学、高校と進学し、運動部に所属したりして、朝から晩まで走り回っていた時期もありましたが書道は辞めませんでした。
そんな中、中学2年の時、部活の最中に膝の大怪我をしてまいました。松葉杖生活になり、少したりとも膝が曲げられず歩くことはおろか、正座など到底できない酷さで、部活はもちろんのこと、ちょうどその時期に締め切りだった全国展のこともありかなり絶望感を覚えました。
それでも、それまでに書き溜めていたものを集めて展覧会にはなんとか作品提出ができました。

それから1,2ヶ月経ってから、新聞にその展覧会の上位3賞の速報が発表されていました。
そこに自分の名前がありました。

驚きと嬉しさと、とにかく信じられない気持ちが入り混じり、すぐに先生にもご報告しました。
怪我で部活も書道も思うようにいかない時期でしたから、救われたというか、辞めないで腐らず頑張れと言われたような感覚になりました。
賞を取ることが書道をする目的には絶対になり得ません。
けれども本当にこのタイミングでのこの出来事は、絶望していた私にとっては大きな救いで、書道が自分の中で更に大きな存在となって、深い繋がりを感じる出来事になりました。

—書道を学ぶ 無知で下手だった—

高校生の時、書道を生業にしようと決め、書道を学べる地方の大学へ進学しました。
親元や師匠の元を離れ、知っている人もいない全く新しい土地での生活が始まったわけでしたが、書道に関して自分がどれほど無知で、狭い範囲の中で多くを知ったつもりでいたのかを痛感しました。
自分が良いと思っていたものは、もっともっと広い中の一要素でしかなかったですし、想像以上に”知らなければそもそも見えないもの”が多いということにも気付かされました。
特に入学して1,2年の内は、毎日初めて知ることの連続で目まぐるしかったです。
また、師匠から手本を書いていただくこともなくなり自分の創作能力の低さにも唖然としました。

知らないことだらけで技術もないのなら、もう頑張るしかないと、ただひたすらに書く書く書く、な時間を過ごしました。

—書道の楽しさ—

大学生活も数年目になる頃には、入学当初より大きく自分の視野や表現が拡がっていると実感が得られるようになりました。
初めて知ることばかりだった時期と比べ、知ったことを人の意見や自分の考えと共に咀嚼して、とりあえずでも”自分の考え”らしいものが持てるようになってきたりしました。
一心不乱だったところから少し変化し、書のさまざまな美しさ、厳格さ、古人達の教養と遊び心、ロマンに強く惹かれるようになっていました。
例えば法帖を眺めているだけで楽しく幸せですし、かなの古筆のどこか数文字の部分を切り取って、その造形美や息遣い、筆線の美にずっと魅入っていられる。和歌や漢詩の粋な表現も知るほどに感心します。
また書以外の分野の美意識や歴史にも興味が芽生え始め、陶器や画、西洋絵画にも心が惹かれるようになりました。
私は美術芸術(音楽もそうかもしれません)は違うジャンルであっても、人を惹きつけるものにある”何か”、というのは共通していると感じるのですが、書を通じて得た視点や美がさまざまなものに繋がっていく感覚がとても嬉しく、楽しいと思いますし、逆に違うジャンルのものを学ぶことで書の解像度が上がったり、違う視点を持てたりすることにワクワクします。

—書く楽しさや書道の素晴らしさを伝えていく—

書道を習い始める前から変わらず、私はやはり書く時間が好きです。
その楽しさはもちろんのこと、書道は素晴らしく、とても深淵な世界だと心から思っています。
そしてその魅力をたくさんの人に伝えていきたいと強く思います。
現在、お教室運営、作品発表、販売等を順々に始めさせていただき、”伝える”のスタートを切ることができました。
これから先も、まずは自分自身が楽しみながら様々にアプローチをして、書道の楽しさ素晴らしさをお伝えしていこうと思っております。